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zoom RSS 亜細亜最新情報 8/3

<<   作成日時 : 2017/08/03 06:20   >>

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亜細亜最新情報 ★ブレイクタイム★
●フランスがガソリン車の販売を禁止する真の理由
産油国は低価格戦略で対抗するしか道がないのか
7月6日、フランスのユロ・エコロジー大臣(環境連帯移行大臣)は、20
40年までに、二酸化炭素の排出削減のため、国内におけるガソリン車お
よびディーゼル車の販売を禁止すると発表した。
具体的内容やそこに至る道筋など詳細は明らかにされていない。また、EV
(電気自動車)の走行距離やバッテリー寿命など技術的課題、そして給電
インフラや産業構造転換など社会経済的課題が現時点では解決されていな
いことから、実現は難しいとする見方もある。
しかし、フランス政府の発表は、G7の先進国政府として初めての、内燃機
関自動車の販売禁止方針の表明である(7月26日には英国も2040年まで
にガソリン・ディーゼル車の販売を禁止する方針を打ち出した)。そして、
パリ協定離脱を宣言した米トランプ大統領が初めて出席するG20(7月上
旬にドイツ・ハンブルグで開かれた20カ国・地域首脳会議、以下G20ハ
ンブルグ会議)とフランス訪問の直前という絶妙のタイミングで、最大の
政治的効果を狙って打ち出された、マクロン仏新大統領の決断であった。
本稿では、このフランスの発表の狙いと背景を分析するとともに、今後の
産油国、特に三大産油国の対応について検討してみたい。
パリ協定の性格
2017年6月1日、トランプ大統領は、選挙公約に従って、米国のパリ協定
からの脱退を発表した。ただ、実際の脱退は、発効3年後から通告可能で、
通告の1年後に効力を有することから、将来の話になる。
そのトランプ大統領のG20ハンブルグ会議とフランス訪問の直前のタイミ
ングで、パリ協定のホスト国として、地球温暖化対策の積極的推進を表明
し、リーダーシップを取ろうとしたマクロン大統領の政治的決断は「凄い」
というほかない。
特に近年、EU(欧州連合)内では、メルケル独首相の主導権が目立ち、フ
ランスの影が薄くなっていただけに、マクロン大統領の国際的な発言力強
化につながるものであった。環境立国は、EUとしての未来戦略でもある。
パリ協定は、2015年11〜12月にパリで開催された、第21回国連気候変動
枠組み条約締約国会議(COP21)で締結され、16年11月発効した国際条約
である。しかし、パリ協定は、同床異夢の産物であり、内容が十分に整合
的であるとは言い難い。
パリ協定では、まず世界共通の長期削減目標として、産業革命前からの気
温上昇を2度(可能ならば1.5度)未満に抑制するとし、先進国だけでな
くすべての国が削減目標を自ら策定し、国内措置を履行、5年毎に目標を
提出することとした。
ところが、各国目標が達成されても、削減量が大きく不足し、全体目標は
達成できないことから、各国は5年ごとに目標を見直し、これを強化して
いくこととされている。「グローバル・ストックテイク」と呼ばれる一連
の仕組みだ。
COP21終了後、会議報告を聞いた時、環境NPO・環境省関係者は2度目標
の合意を、産業界・経産省関係者は各国目標の履行を強調していた。筆者
は同じ会議の報告とは思えなかったことを記憶している。当然、EU各国は、
全体目標の実現を重視している。
★ディーゼル車の行き詰まり
実は、米国は脱退するまでもなく、パリ協定で自ら課した削減目標(2025
年に2005年比26〜28%削減)の達成は何ら難しいことではない。シェー
ル革命により、米国内の天然ガス(パイプラインガス)価格が下がり、火
力発電用燃料は石炭からガスにシフトしており、二酸化炭素排出量は順調
に減り続けている。
したがって、トランプ大統領がいくら石炭復権を叫んでもその実現は難し
い。米国石炭産業の後退は、パリ協定ではなく、シェール革命によるもの
である。そのため、トランプ大統領にとっての問題は、目標見直し時の目
標の緩和禁止規定の解釈の問題に過ぎないとする指摘もある。
確かに、地球温暖化対策は人類の持続的発展にとって喫緊の課題ではある
が、先進工業国において、現時点で、現状の自動車産業を否定する政策方
針を打ち出すことは、驚きである。
現在の自動車産業は、エンジンをはじめ部品点数も多く、関連産業のすそ
野も広く、雇用に与える影響も大きい。日本自動車工業会によれば、車体
・部品関連の製造業雇用者だけで約80万人、販売・サービス等の自動車
関連産業全体では550万人の雇用者があるといわれる。それに対し、EVは、
モーターを中心に部品点数も少なく、雇用吸収力も必ずしも大きいとは言
えない。わが国では、こうした決定を国民的議論なしに突如発表すること
は無茶な話だろう。
現時点で、フランスが内燃機関自動車の禁止方針を打ち出した背景には、
ドイツのフォルクスワーゲン(VW)による米国燃費規制違反を契機とする
ディーゼル乗用車の技術的限界もあるのであろう。7月18日には、独ダイ
ムラーが燃費規制とは無関係としつつも、「メルセデス・ベンツ」ブラン
ドのディーゼル車の大規模リコールを発表したところであり、また、7月
5日には、スウェーデンのボルボも2020年には販売全車種を電動車にする
と発表している。
伝統的に、フランスを代表する自動車会社ルノーを含め、欧州系の自動車
メーカーは、ディーゼル乗用車に強い。にもかかわらず打ち出されたフラ
ンスの内燃機関自動車販売禁止方針は、ディーゼル自動車技術に対するギ
ブアップ宣言であり、フランス自動車業界に対する「転身」要請かもしれ
ない。
わが国では、石原慎太郎・元東京都知事のディーゼル排ガス規制時の経緯
からディーゼル車へのイメージが悪いが、欧州では、ディーゼル車はガソ
リン車よりむしろハイテクなイメージがあり、燃費不正発覚以前には、乗
用車の新車登録ベースで、ガソリン車よりディーゼル車の方が、むしろ多
かった。同クラスの乗用車で、ディーゼル車の方が20%程度燃費が良いこ
と、燃料税もガソリンよりディーゼルが安い国が多いことも、欧州のディ
ーゼル車人気の要因であった。
一般に、燃費規制と排ガス規制の間には、エンジンの構造上、トレードオ
フの関係があるといわれる。公害問題華やかなりし時代には、大気汚染対
策としての排ガス規制の強化が進んだが、その後の地球温暖化が問題とな
ってからは、燃費規制が徐々に強化されてきた。そうした中で、燃費規制
と大気汚染対策、特に窒素酸化物(NOx)規制を両立させることが難しく
なってきたことが、VWの燃費不正の背景にある。その後、燃費不正は、多
くのディーゼル車メーカーに広がった。
なお、マクロン大統領は、前のオランド政権の経済・産業・デジタル大臣
時代、ルノーに対する政府関与を巡って、ゴーン率いる経営陣と対立した
こともあった。だが、ルノーは早い段階からEVの本格的導入に向けて取
り組んでおり、わが国でもEVに強いと見られる日産自動車・三菱自動車
と資本提携している。
★原子力発電による電気
もう一つ、フランスが内燃機関自動車の禁止方針を打ち出し、EV等の電
動車に舵を切った背景には、フランスの電力がほとんど二酸化炭素を排
出せずに作られていることもある。
電気事業連合会の資料によれば、フランスにおける電源別発電電力の構
成比(2014年)は、石炭・石油・天然ガスで5%、原子力で77%、水力
・再生可能エネルギーその他で17%だった。化石燃料起源の電力は5%
に過ぎず、8割近くが原子力起源の電力で、クリーンな電力であると言
える。
これに対し、わが国では、化石燃料86%・原子力0%・再生可能エネル
ギー14%と、化石燃料起源の電力が圧倒的に多く、現時点では、EVは温
暖化対策にならない。自動車の走行段階でCO2排出がなくとも、発電段
階でCO2を出すのではトータルでクリーンな自動車とは言えない。
1970年代に石油危機を2度経験し、フランスでは、エネルギー安全保障
確保の観点から、石油依存脱却の切り札として、原子力発電の強化を図
って来た。チェルノブイリ事故が起きても、また福島第一原発の事故の
後でも、原子力への依存・信頼は揺るがなかった。「中東の石油より、
自国の科学者を信じる」という言葉もあった。2016年の一次エネルギー
供給ベースでも石油が32%に対し原子力は39%を占めた(英エネルギ
ー大手BPが毎年発行している「BP統計」2017年版)。
その取り組みが、地球温暖化対策においても、功を奏していると言える。
そもそも、パリ協定自体、そうした確固としたエネルギーの基盤がフラ
ンスになければ、まとまらなかったに違いない。わが国が直面している
環境保全・エネルギー安全保障・経済成長のいわゆる「3E」のトリレン
マから、フランスは解放されているのである。
★ドイツの立場
フランスの内燃機関自動車禁止方針発表に、最もショックを受けたのは、
ドイツのメルケル首相であったかもしれない。ドイツは、EU内でフラ
ンスと並ぶ環境保護国家であり、温暖化対策のリーダーである。しかし、
現時点では、フランス同様に、将来の内燃機関自動車禁止方針は打ち出
せないであろう。
なぜならば、国内自動車産業の規模がフランスの約3倍であるからだ。
2016年の世界の自動車生産量は、中国2812万台、米国1220万台、日本
920万台、ドイツ606万台がトップ4位であり、フランスは第10位の
208万台である(日本自動車工業会調べ)。
また、発電における石炭と天然ガスへの依存度はそれぞれ46%と13%
だ。自然エネルギーが21%と比較的高いものの、火力比率が高いため、
電化は温暖化対策にならない。
ドイツは、温暖化対策先進国と言われながら、ロシアからの天然ガス
依存上昇に対する安全保障の配慮からか、石炭火力を温存する政策を
伝統的に採用してきた。政治的にも、石炭労組の発言力は未だに強い。
原子力発電の将来的廃止を打ち出す中、今後は、日本同様、「3E」の
トリレンマから抜け出すことは難しくなるものと思われる。
★原油価格低迷の意味
国際エネルギー機関(IEA)によれば、2015年の世界の石油需要の約
56%は輸送用燃料であり、そのうち約8割が自動車燃料と考えられる。
産油国にしてみれば、今回のフランス政府の方針表明は、市場におけ
る核心的な需要の喪失を意味する。既に、インド政府も、2030年を目
途にガソリン車の販売禁止の方向を打ち出しており、一部の北欧諸国
も同様の検討を行っているといわれる。
産油国としては、こうした動きが続くことを警戒していることであろ
う。しかし、OPEC産油国は地球温暖化対策に対抗するための措置を、
既に2014年秋の段階で講じていると見られる。
2014年11月のOPEC総会におけるシェア確保戦略発動による減産見送
り決議である。一般的には、シェールオイルの増産に対抗して、価格
戦争を仕掛けたとされている。バレル当たり100ドルから50ドル水準
への価格引き下げによって、生産コストの高いシェールオイル減産を
目指したことは確かである。
同時に、高価格を維持することによる需要減少と石油代替技術の開発
の阻止を目指したものとも考えられる。OPEC産油国にとって、シェア
確保戦略とは、現在の石油市場のシェアも重要であるが、将来のエネ
ルギー市場における石油のシェアの維持も視野に入れた構想である。
特にサウジアラビアにとっては、「石器時代が終わったのは石がなく
なったからではない」(ヤマニ元石油相)。シェール革命も、技術革
新による資源制約の克服であった。サウジは石油資源の枯渇よりも、
石油の需要を奪う新技術の登場を一番恐れている。サウジアラムコ(
国営石油会社)の新規株式上場(IPO)も、地球温暖化対策による原
油資産の座礁資産(Stranded Asset、資金回収できなくなる資産のこ
と)化に対するリスク分散、一種の「保険」であるとする見方もある。
現時点においてEVは、走行距離の問題やバッテリー寿命などの技術的
問題、給電施設などインフラの問題があって、まだまだ普及段階とは
言えない。だが、将来技術開発が進めば、そうした問題点は一つずつ
解決されてゆくだろう。
EVの普及を先送りさせるには、産油国として打つ手は、財政赤字に耐
えつつ、原油価格を低迷させ、技術開発のインセンティブをそぐこと
ぐらいしか考えられない。
おそらく、2016年の年末以降、協調減産でOPECと行動を共にしてい
るロシア等の非加盟主要産油国にしても、同じ認識を持っているであ
ろう。
最大の産油国であり、最大の自動車生産国である、アメリカはどうか。
エネルギーの自立(自給化)と同時に、自国の雇用の確保を目指すト
ランプ政権にとっては、パリ協定や地球温暖化対策など、関係ない。
現状の方針を進めてゆくしかない。
そうなると、OPECと非加盟主要産油国は、短期的にはシェールオイル
とシェアを争い、中長期的には石油代替技術と需要を争いつつ、現状
程度の協調減産を続けていくことになる。
したがって、今後、相当長期にわたって、原油価格は現状程度で低迷
を続けるのではないかと考える。
●中国AI、米に肉薄 データ数で圧倒的に優位
AI開発の分野で、先頭を行く米国に中国が迫りつつある。一部の分
野では既に追い越しているようだ。ネット利用者の絶対数の多さがも
たらすデータの量と多様性が、深層学習分野で有利に働く。既存のI
T(情報技術)大手もベンチャー企業も、中国政府の支援を受けつつ、
AI技術開発にまい進する。
2017年の年明けに、世界のAI(人工知能)開発の行方を暗示する2
つの出来事が連続して起こり、この業界の動向を追う人々の注目を集
めた。
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1つ目は、世界最大のソフトウエア企業、米マイクロソフトの幹部だ
った陸奇氏が中国企業に移籍したことだ。自転車事故でけがを負い休
職中だった陸氏は1月半ばに移籍を発表した。けがが治ってもマイク
ロソフトに復帰はせず、中国検索エンジン大手・百度(バイドゥ)の
最高執行責任者(COO)に就任する。
続いて1月末には、国際的なAI学会「AAAI」の年次大会の開催
が延期された。予定されていた日程が、中国の春節(旧正月)と重な
ったためだ。
AIは、デジタルアシスタントから自動運転車まで、あらゆる分野で
不可欠な技術になると広く考えられている。そのAIの一部の分野で、
先頭を行く米国に中国が迫っている──分野によっては追い越してさ
えいる──ことを示す兆候はこれまでにも見られた。先の2つの出来
事はその最新の表れだ。
■論文数で世界1位
陸氏は移籍の理由を、中国がAI開発に適した場所であり、バイドゥ
はその中国で最も重要な企業だからだと説明した。「我々は未来のA
Iを先導する機会を手にしている」(陸氏)
陸氏の主張を裏づける証拠はほかにもある。米国政府が16年10月に
発表した報告書によると、AI研究の一部門である深層学習(ディー
プラーニング)において、学術誌に掲載された論文数で中国が米国を
上回ったという。
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英コンサルティング会社プライスウォーターハウスクーパース(Pw
C)は、AI関連産業の成長は30年までに、世界の国内総生産(G
DP)の総額を16兆ドル押し上げると予測する。しかも、その伸びの
半分近くを中国のAI産業が担うという。
近年のAI関連の特許申請件数を見ると、絶対数ではなお米国がトッ
プであるものの、中国人研究者による申請件数は3倍近くに増えた。
中国がなぜAI開発に適しているのか。その理由を理解するには、A
I開発に必要な要素を考えればよい。最も基本的な要件であるコンピ
ューターの演算能力と資本が、中国には豊富にある。
電子商取引大手のアリババ集団やネット大手の騰訊控股(テンセント)
など中国の大企業はもちろん、CIBフィンテック(興業数字金融服
務)やUクラウドといったベンチャー企業も、データセンターを早期
に建設すべく全力を注ぐ。米調査会社ガートナーによると、クラウド
コンピューティング市場の成長率は近年30%を超え、今後もこのペー
スで成長を続けそうだという。
中国のシンクタンク、烏鎮智庫によれば、中国のAI企業が12〜16
年に調達した資金は26億ドルに達する。米国のAI企業が集めた179
億ドルには及ばないものの、その総額は急速に膨らんでいる。
■大量データが深層学習を支援
しかし、中国を真の意味でAIの約束の地にしている要素は、別の2
つの資源にある。一つは人材だ。この国には、優れた計算スキルに加
え、言語と翻訳を研究する伝統がある。マイクロソフトのAI開発を
率いるハリー・シャム氏はこう指摘する。
アリババで150人のデータサイエンティストを監督する閔万里氏は、
現在、最高レベルのAI専門家を中国で見つけるのは、米国で見つけ
るよりも難しいという。
しかし、この状況はあと数年で変わると同氏は予測する。中国の主要
大学の大半がAI講座を開設しているからだ。AIを学んだ世界の科
学者の5分の2以上が中国にいるとの推定もある。
中国が持つ第2の資源はデータだ。データはAIの世界で最も重要な
要素である。かつて、ソフトウエアやデジタル製品は基本的に、プロ
グラムされたルールに従って動作するものだった。それゆえ、優れた
プログラマーを擁する国が優位に立った。
しかし、深層学習のアルゴリズムが出現し、動作のルールは、大量の
データから抽出したパターンに基づいて作られるようになった。利用
できるデータが多ければ多いほど、アルゴリズムは多くを学ぶことが
でき、AI製品は賢くなる。
こうしたAIのサイクルにおいて、中国という国が持つ規模の大きさ
と多様性は強力な燃料となる。14億人に近い中国の人々は、日常生活
を送るだけで、ほかのほぼ全ての国の国民を合わせたよりも多くのデ
ータを生み出している。ごくまれな病気であっても、診断法をアルゴ
リズムに学ばせるのに十分な症例数を確保できる。
中国企業は、音声認識を改良するのに必要な音声データも数多く保有
している。漢字の入力は、欧米の文字を入力するよりも手間がかかる。
そのため中国の人々は音声認識サービスを比較的多く使う。
中国に、ほかの国との違いを真にもたらしているのは、約7億3000
万人に及ぶ、他国の追随を許さないインターネット利用者の多さだ。
そのほぼ全員がスマートフォンでネットにアクセスする。
スマホのほうが、デスクトップパソコンでネットを利用するよりも有
用なデータを生み出す。スマホは様々なセンサーを内蔵しており、し
かも持ち歩かれるからだ。例えば中国沿岸部の大都市では、少額の買
い物に現金が使われることはまずない。人々は支付宝(アリペイ)や
微信支付(ウィーチャットペイ)などのサービスを利用して、スマ
ホで決済する。
中国の人々はプライバシーをあまり気にかけないようだ。このため比
較的容易にデータを収集できる。例えば、中国の大都市で自転車のシ
ェアリングサービスが急激に広まっている。
このサービスは、安価な移動手段を提供するだけでなく、一種のデー
タ活用事業でもある。一部の自転車シェアリング企業は、自転車に取
り付けた全地球測位システム(GPS)を使い、利用者の移動経路を
追跡している。
中国の若者はAIを使うサービスを特に熱心に利用する。その際、自
分の個人情報を使われることに寛容だ。
マイクロソフトが提供する「シャオアイス(小冰)」は、現在中国で
1億人以上が利用する人気のチャットボットだ。シャオアイスに話し
かける人が最も多い時間帯は午後11時〜午前3時。内容は、その日に
利用者が経験したトラブルについてのものが多い。シャオアイスはこ
の会話から学び、ますます賢くなっていく。
今ではシャオアイスは、利用者を元気づけたり冗談を言ったりするだ
けではなく、AI初の詩集を発行するに至っている。「陽光は窓を失
った」というタイトルのこの詩集は、中国の文壇で激論を巻き起こし
た。人工的な詩などというものがあり得るのか、という議論だ。
中国政府の支援も重要な役割を果たす。中国が現在進める5カ年計画
において、AI技術は突出した扱いを受けている。IT企業は政府機
関と密接に連携する。
例えばバイドゥは、国立の深層学習研究所を主導するよう要請されて
いる。中国政府がAI企業を厳格な規制で縛ることは考えられない。
中国にも個人情報保護に関する規則を含む法律は40以上あるが、それ
らが実際に適用されることはまれだ。
■急成長するAIベンチャー
起業家は、人材とデータの強みを生かそうとしている。中国のAI企
業は、設立からまだ1〜2年のものが多い。だが、かなりの数の企業
が、欧米のベンチャー企業に比べて速いペースで発展を遂げてきた。
「中国のAIベンチャーは、比較的迅速に試行を繰り返し、実践に移
すことが多い」と李開復氏は解説する。李氏は2000年代に米グーグル
の中国子会社を経営していたが、現在は中国のベンチャー・キャピタ
ル・ファンド、シノベーション・ベンチャーズを率いる。
こうした背景から、中国には既に多くのAIユニコーン*が存在する。
北京のベンチャーが提供するニュースアプリ「今日頭条」は、読者の
関心や所在地などの情報に基づいてお勧め記事を選ぶために、機械学
習を採用している。偽情報の排除にもAIを使う(中国では健康関連
の怪しげな発表が多い)。
*=ユニコーンは10億ドル(約1100億円)以上の企業価値を有する
ベンチャー企業
別のAIベンチャー、科大訊飛(アイフライテック)は中国語を英語
やドイツ語を含むいくつかの外国語に翻訳する音声アシスタントを開
発した。話し手がスラングを使ったり、騒音の多い場所で話したりし
ても機能する。
北京曠視科技(メグビー・テクノロジーズ)の顔認識ソフト「Fac
e++」は人間をほぼ瞬時に識別する。
メグビーの本社を訪問すると、顔認識ソフトの性能を存分に見せつけ
られる。ロビーに設置されたカメラのおかげで、社員たちはゲートで
身分証を示す必要がない。顔パスで構内に入ることができる。
同様のカメラが社内のあちこちに置かれ、壁面のモニターがその映像
を映し出している。誰かの顔が映ると即座に白い枠がその顔を囲み、
その人物に関する情報を表示する。画面右上には大きく「スカイネッ
ト」の文字。映画『ターミネーター』で人類を絶滅に追い込もうとす
るAIシステムの名前だ。
メグビーのソフトは既に、モバイル決済のアリペイや配車アプリの滴
滴出行(ディディ)が、新しい顧客の身元を確認するのに利用してい
る(カメラに映った顔は、政府が保有する写真と照合する)。
中国のIT大手も、こうしたベンチャーの成功に刺激され、AIに巨
費を投じ始めている。バイドゥ、アリババ、テンセント(BATと総
称される)は、音声認識や顔認識など、多くの同じサービスに取り組
む。加えてBAT各社は、それぞれが以前から持つ強みを生かしてA
Iの特定分野で主導権を握ろうと努力しているところだ。
テンセントは、今のところ最も出遅れている。ほんの数カ月前にAI
研究所を設立したばかり。しかし、同社はバイドゥやアリババよりも
保有するデータ量が多いため、AI市場で大きな存在になることは間
違いない。
同社のメッセージアプリ、微信(ウィーチャット)は10億近いアカ
ウントを持つ。そのプラットフォーム上では、決済からニュース、都
市ガイド、法律相談まで、何千ものサービスが展開されている。
テンセントはゲームの分野でも「リーグ・オブ・レジェンド」や「ク
ラッシュ・オブ・クラン」など世界的なヒット作を持つチャンピオン
だ。これらのゲームはそれぞれ、世界全体で1億人以上のプレーヤー
を抱える。
アリババは巨額の投資により、クラウドコンピューティングでも最大
手の座を目指す。6月に上海で開催された見本市では、「ETシティー
・ブレーン」というAIサービスを披露した。画像認識技術を利用し
て都市交通をリアルタイムで最適化する。道路脇のカメラに映った映
像を基に自動車の動きを予測し、その場で信号機を調整する。アリバ
バの本社がある杭州では、このシステムにより、クルマが流れる平均
速度を11%速めたと同社は主張する。
アリババは「ETメディカル・ブレーン」というシステムの強化も計
画する。こちらはAIを利用して製薬や病気の画像診断のサービスを
提供するもの。既に10以上の病院と契約を結び、必要なデータの提供
を受けることになっている。
将来の運命がAIに最も依存するのはバイドゥだ。同社がアリババ、
テンセントと競争するうえで、AI技術は最大のチャンスをもたらす
と考えられる。
バイドゥは、自動運転技術に資源の大半を注ぎ込む。18年までに自
動運転車を市場に投入。完全に自律的に移動する乗り物のための技術
を20年までに売り出すことを目指す。
月5日に北京で開催された開発者会議で、同社は「アポロ」という自
動運転ソフトの初期版を発表した。アポロを適切に使用すれば、クル
マを路上で安全に走行させられるだけでなく、他社にも開かれたある
プロジェクトに寄与することもできる。
現在、グーグルの自動運転部門ウェイモや、電気自動車の米テスラな
どの競合各社は、自社で開発したソフトや蓄積したデータを懸命に守
ろうとしている。これに対してバイドゥは、ソフトの内容を公開する
(業界用語で言えば「オープンソース」化する)ばかりか、データま
で共有する計画だ。
バイドゥの技術を利用する自動車メーカーも同様に、自動運転車から
集まるデータのためのオープンなプラットフォームを作ることになる。
前出の陸氏はこれを「自律運転自動車のアンドロイド」と呼ぶ。
■データの優位性は永遠ではない
中国企業がAI製品をどの程度輸出できるようになるかはまだ分から
ない。現時点では、中国製のAIが海外で利用される例は数えるほど
しかない。
理屈から言えば、中国製の自動運転車が世界に広まっても不思議では
ない。中国の混沌とした交通環境で運転を覚えた自動運転車なら、欧
州の洗練された道路を走ることに何の問題もないはずだ(逆にドイツ
で学んだ自動運転車は、北京では最初の交差点を通過することもでき
ないだろう)。
しかし、欧米の消費者は、安全基準が緩く、ある程度の事故が容認さ
れる環境で訓練された自動運転車に乗ることをためらうだろう。中国
各地の地方政府は、自律運転自動車の試験運用地域になろうと先を争
っているという。
別のリスクもある。今のところ、データはAIにとって最も価値ある
資源だが、その重要性はいずれ薄れていく可能性がある。AI企業は、
ビデオゲームなどから得られるシミュレーションデータを学習に使い
始めている。また、比較的少ない事例しかなくても、AIの能力を磨
くことができる新種のアルゴリズムが登場するかもしれない。
自動運転技術を開発中の北京のベンチャー、UISEE(馭勢科技)
の呉甘沙・最高経営責任者は、「危ないのは、データが豊富なことに
甘えてアルゴリズムの革新を止めてしまうことだ」と警告する。
とはいえ、中国は今のところ、自己満足に浸っているようには決して
見えない。AIの世界一を目指す競争で、中国は米国を追い詰めるに
相違ない。



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